今日はたか☆ひ狼さんに誘われて、川崎のチネチッタまで映画を見に行きました。そんなわけで最近観た映画の感想を〜。
今回は、さまざまな衝撃をもたらした問題作、『パッション』を。
(ネタばれ部分は反転してあります。自己責任でお読みください)
『パッション』 え〜。最初は思ったのです。痛そうなシーンやホラー映画並にびっくりさせる描写でやっているだけの映画なんじゃないかって。というか、私はこの映画を見るのに、最初ちょっと距離をおいておりました。素直には観られなかった、といいますか。
この映画は、米国公開と同時に猛烈な賛否両論の嵐が起こりました。
「すばらしい!見事な受難物語だ!」という意見。
そして「この映画は反セム主義を助長する!」という意見。
反セム主義というのはユダヤ人差別主義といいましょうか。一言で言うのはなかなか難しいのですが、西洋では長いこと「ユダヤ人はイエス・キリストを殺した民族だ」という理由でユダヤ人差別が行われてきました。第2次世界大戦のアウシュビッツ、そして、現代においてもユダヤ人に対する根強い差別は続いているわけです。そして、その差別を何とかしてなくしたい、と思っている人は多いのです。
が、この映画ではユダヤ人がイエス・キリストを殺すシーンが実に迫力たっぷりに描かれるのです。だから、この映画は危険だ、そう警告する人たちがいるのは当然なわけです。
(念のため言っておきますが、キリストを殺したのは「人間」であって、ユダヤ人という特定民族ではないです。そもそも、キリストの死をユダヤ人のせいにしてしまっては、キリストが自分の罪の身代わりとなって死んだ、というキリスト教の信仰は成立し得ないのです。ユダヤ人をスケープゴートにすることはキリスト教の信仰と関係ないことはもちろん、キリストの隣人愛の教えに真っ向から対立することです。……でも、歴史の中でクリスチャンがそういう過ちを犯してきてしまったのも事実。悲しいですね)
というわけで、私は自分の目でこの映画を観て、自分の判断を下そう、と思ったのですが。
最初は、痛々しいシーンや、ショッキングなシーンで、もうだめだめでした。しかし、(以下ネタばれ反転)
まず、キレネ人シモンがキリストの十字架を担がされるシーンから徐々にのめりこんでしまいました。最初、「俺はこの人とは関係ない」といっていたシモンが次第にイエスに、そしてイエスにかかわる人たちがいかにイエスに触れているかを見るうちに、変えられてゆく描写に泣きが入りました。
また、母マリアが倒れ伏すイエスに駆け寄って「私がここにいる」と言うシーン(このシーンは聖書にはない、オリジナルのシーンなのですが)、思わず泣きが入りました。
そして、母マリアと福音書記者ヨハネに「それがあなたの息子だ」「それがあなたの母だ」とイエスが告げられるシーンなど、もう滝涙状態でした。 というわけで、すっかりのめりこんでしまったわけですが、この映画を観て一つ腑に落ちた点がありました。
それは、イエス・キリストが十字架につけられてたったの3時間で死んでしまったというのはなぜか、ということです。十字架刑とは刑人を長く苦しませることを目的とした処刑方法なのですが、その方法で処刑されたイエス・キリストがなぜそんなにすぐに死んでしまったのか。
あんだけいたぶられたら、そりゃすぐ死にますわな。
どうも、私はこんな仕事についていながら、キリストの受難というものを甘く考えていた節があるようです。まぁ、それだけ衝撃的な映画だったわけなのですが。メル・ギブソンがどれだけキリストの受難を苦痛に満ちたものとして受け止めていたのか、それを痛感できました。
ただ、そう感じるのはひょっとしたら信仰をもっている人だけかも、とも思いました。あそこまで陰惨で苦痛に満ちたシーンを、これでもか、これでもかと流しますと、ただ単に残酷なだけの映画なのか、と思われてしまうのではないか、そう思わされたのです。そしてそれは、この映画単体にたいしてだけでなく、「キリスト教はなんて残酷なんだろう」というようなイメージになるのではないか? なんて思ったりもしました。うがちすぎでしょうか?
それから思わされたのは、人は受け止めたものをより先鋭化、過激化させて表現するのだ、ということです。(以下ネタばれ反転)
たとえば、ゴルゴタの丘は切り立った巨大な岩山となり、イエスの死のシーンに至っては神殿の幕が裂けるどころか神殿そのものが裂けてしまっていたりします。こうやって伝承されれば伝承されるほど派手になってゆく。あぁ、これが伝承史的なできごとなのだなぁ、と思わされました。 ところで、エンディングのスタッフロールを見ていたところ、Nicodemosという名前が。あれ?ニコデモって出ていたっけ? と思ってよくよく思い返してみたら(以下ネタばれ反転)
サンヘドリンでイエスを皆で陥れようとしていたシーンで、カイアファたちに反対して、「これは茶番だ!」と叫んでいた人物がいましたが、あれでしたか!というようなことがありまして。スタッフロールを見なきゃ気づかないですよ、普通。
(続く)
posted by Chesedh at 19:58|
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